キツツキの穴

日々つついた穴を埋めたり、のぞいたり、もっと深く大きくしてゆく穴掘りメモ。

薄れては戻ってくる悲しい

もうすぐ彼の訃報を知って一か月になろうとしているなんて信じられないが、
彼に毎週会えた番組がとても好きだった。
録画したその番組がまだ見れない。
その番組内で特集されている内容も、美しい風景も、
世界の素晴らしさも目に入らないことが想像できるから。
きっと彼のことばかり見てしまう。彼のことばかり考えてしまう。
そう思うと、まだ見れないかもしれない。

彼の̪死がまだ現実に思えないふわふわした心地だった時、
洗濯籠に手を入れた瞬間ムカデに薬指の先をかまれた。
その痛みを感じながら、体中に熱を感じ、胸が締め付けられるような苦しさと動悸に不安になりながらも、彼はもうこんな痛みも感じなることもない。
肉体を、魂の入れ物を壊して逝ったのだなと考えてりして
もうムカデと聞いたり見たりしたら彼もセットで思い出すだろうとさえ思う。

小さなかわいい少年だったころから、青年になり、大人の男の人になっていくのを
とても透きとおったものを見ているように見ていたら本当にそうなってしまった。
ただの一視聴者でさえ、やっぱりまだまだ悲しい。
薄れていっているのだけれど、時々不意に思い出してぶり返して悲しい。
そういうものだと知ってるのだけど悲しい。