キツツキの穴

日々つついた穴を埋めたり、のぞいたり、もっと深く大きくしてゆく穴掘りメモ。

泥の水

「ママ、なんで怖いテレビばっかり見るの?」

次女がそう言った。
それは、鬼怒川の決壊を伝える中継映像で、
画面の中でヘリでの救助活動が行われている。
「うん。」
言葉にならない。
その映像が流れているこの時間の間は目が離せない。
そしてその間は、常に、ずっと、早く、早く助けて。
早く、早く、水よ止まれ、早く引け。
と、願い続けている。

テレビを消してしまうと、何でもないあり難い日常に戻って
願うことを忘れてしまう。
届く、届かないはわからないが見ることが願うことだった。

2011年の京都府南部の弥陀次郎川の水害でうちの町内も水に浸かり、
家の前や、ガレージ、家庭菜園などの害だけで済んだのだが
町内総出で泥をかく作業をしながら、頭上を飛ぶ報道のヘリコプターを
傷口にたかるハエのようだと思ったりした。
そのヘリの救助の要請、情報を伝えることで助かった命も危険を回避させることもできる。
そして、遠くで見ていた私たちは助かるように祈りを込めた。

一転した生活、住まい、未来。
言葉がない。