キツツキの穴

日々つついた穴を埋めたり、のぞいたり、もっと深く大きくしてゆく穴掘りメモ。

ギュって

7年。
長女が生まれて島で元夫と過ごした時間を
離れて過ごした時間が越えてしまった。
次女3年生9歳なんかは、もうとっくに越えている。
次女に、
「こないだパパに会った時、抱っこしてもらった?」
って聞いたら
「ううん。してもらってない。」って。
ショック。ショック。ショック。
ママがショック。

ママは、遅くにお布団に入るとき隣で寝てる次女に
「ね~ね~ぎゅってして」
って声かけたら寝ぼけながらもぎゅってされたいくらいだよ。
してくれないほど寝入っていたら、手つないで寝たいくらいだよ。
ふとした何でもない時にも、ぎゅってしたいってギュウってしちゃうくらいだよ。
あんたたち、久しぶりにあってもパパにぎゅってされないとは、
もうそこそこまで落ちたね。
もう、パパは十分に別の子で足りてるってことだな。
全然、お互いに連絡しないからお互いに冷めてきちゃってるんだよ。
離れてるってこうゆうことなんだ。
養育費がフェイドアウトしていくってこういうことなんだ。
パパが育てたかった想像の娘像と擦れてしまっているのだな、一緒にいないことで。
島で育っていないことで。
ママといることで。
次会った時には、ギュってしてあげなよ。してもらいなよ。

ぼんぼりの灯り

私のおばあさんが買ってくれた七段飾りのお雛様を飾っている。
子らは毎年着物を着てひなあられを食べて、お道具で遊んで、写真を撮る。
そして、春休み、または旧の暦でお雛様を片づける。
その間、私たちの寝所に使っている和室はお雛様のぼんぼりをつけていたりする。
気持ち悪くも怖くもないが、
その灯りはひときわ私と子らの三人なのだとはっきりさせる。
いつもの保安灯の豆電球の灯りは、あの島で眠っていた時と同じ。
どこにいるのか錯覚してしまうくらい。
その時も、眠りにつく頃は二人の子らと私の三人で
元夫がその時間寝間にいたことはほとんどなくて三人が日常で
今も、夜はその延長のようだ。
だから、お雛様のぼんぼりの灯りも、毛氈の赤で部屋の壁がいつもより赤く見えて、
全く別の次元を生きているとはっきりさせられている。

それにしても、子らが小さくて小さいほど、私の体は疲れてしんどくてつらかった。
午前は元気に動きまわれたが、昼を過ぎるともう息をするのも立つのもつらいほどに疲労困憊していた。
今は仕事をして、家事をして少々の夜更かしも平気なほどなのに。
今が、一番元気かもしれない。
どうしてあの頃あんなに体も動かないほどしんどくて、眠くて、つらかったのだろう。

彼岸の記憶

春分の日
キリストの復活祭イースター
春の彼岸。
そんな日に、7年前のその日私は家を出て、逃げた。
この日を目指してかのように、気候の不安定さもあるだろうが、
体も心も7年前に引き戻されるように苦しい。
が、養育費も滞っていて心細い、ふと気が緩むと記憶の嵐につぶされそうで怖い、
と仕事の時間を詰め込んで子らは家で退屈しているだろうが、出勤した。

夜、一人になった時間、7年前からそこを動かない私の小さなウニピヒリを
私が迎えに行く。
彼は迎えには来なかったよウニピヒリ。
これからも迎えには来ないんだよウニピヒリ。
ごめんね、島に帰りたかったの知ってたのにウニピヒリ。
今日はお彼岸。
この期間くらいは島に帰ろうウニピヒリ。
私が連れてくウニピヒリ。
西向きの玄関。
いつもきれいに掃いて磨いて、子らも草履を並べてそろえてたね。
白いレースのカーテン。
いつも掃いて拭き掃除した廊下。
南向きの窓は明るすぎるくらいだった。
海からの潮風ですぐ曇って汚れる窓のガラスは毎週大掃除みたいだった。
東の台所の窓はブーゲンビリアが元気だった。
青い食器棚は2年前に見た時すごい傷がついていた。
悲しかった。
私の誕生日に買ってもらったガスオーブン。
たくさんパンやケーキを焼きたかった。
そのガスオーブンを載せる台はわたしが寸法を考えて作った。
たくさん雨が降ったら壁から水がしみてくるような粗末な作りだった。
ねずみが入ってこないように換気扇はずっと回しっぱなしだった。
ウニピヒリ、あなたはこの家が好きだった?
あの水色の軽自動車でドライブする?
家の前の浜を歩こうか?
気がすむまで居よう、お彼岸だもの、帰りたかったねウニピヒリ。
ごめんねウニピヒリ。
迎えに来てって言わせなかった。
そこで生きていく力がなかった。
独りだった。
そこで、誰にも助けてって言えなかった。
もう少し私のウニピヒリと彼岸で過ごす。

春 誕生

次女が9歳になった。
午後6時。
毎年のことだけれど、
「今生まれた~!!」
と、うれしい、うれしいがいっぱいに自分で自分の誕生を喜ぶ。
みんなに、おめでとうをいっぱいもらう。

誕生日の人はその日食べたいものをリクエストする。
今年の次女は、ピザ。
みんなでトッピングしながら、ガスオーブンで焼いて熱々を切り分ける。

皆からプレゼントをもらう。
長女の時はつい、いつも実用重視のもの。
でも、次女にはなぜか、ただ喜ぶ顔見たさの欲しがっていたものを。
長女の望むものは高額で、こちらもそうやすやすと与えられず、それでいてそう強く訴えない。
次女の望むものは、いつもそこそこ手軽で、しつこく何度もさりげなく強引にアピールする執念がある。
今年の次女は、腕時計と初シャープペンシル、流行りの耳が動かせるうさぎの帽子。
そして、チェキ。
これは、私が欲しかったもの。次女の誕生日にかこつけて買ってしまった。
フイルムは一枚60円くらいだよ。
と、教えたら、
「3枚撮ったから180円や~~!!」
と、記念写真を撮ってすぐに浮き出てくる自分の姿に感動しつつ、
計算して、一枚一枚を大事にシャッターを押していた。
やっぱりデジタルで撮りためる写真は苦手で、
いつでもすぐに手にとって眺めたい私にはこれが似合ってると思って手に入れた。
今を、シャッター押したくなった私。
チェキデビューは、次女の誕生日。
私にも春、再来。
冬と行ったり来たりしながらの残冬を脱ごうとしている。

もう 起きよ

とても長い間、冬眠してしまった。
寒さに疲れて、冬バテした感じ。
夜長く起きてるのが難しかった。
翌日のすべての行動に支障が出る事、
一つ一つの目の前のことが、
何となくこなされていくことを後悔するのを減らしたかった。
自分の体温を維持すること、エネルギーを持続させることに
どうしたらこの季節を過ごしていけるか、
効率を考えてルーティンを崩さないことを心掛けていた。
一年を通じて、何ら変わった生活ではなかったが、寒さと、気圧の低さは心身にこたえる。
「ママ、もう蓄えんでもいいんじゃない?」
と、一緒にお風呂に入っている次女が私のお腹にまとったフルフルとしたものに触りながら、もう冬眠から覚めよと言う。
そうだよね、今日の雨で畑の梅の花も散ってしまうだろう。
わかってる。
もう、起きてる。