キツツキの穴

日々つついた穴を埋めたり、のぞいたり、もっと深く大きくしてゆく穴掘りメモ。

もう子供たちは私に爪を切らせない。

私の指は太くて短くて指先に向かってすぼまっていって、丸い爪がついている。
自分では気に入っている。
子らは私と同じ爪の形にされることを恐れていて嫌ってもいるんだろう。
彼女らは細い指、四角い大きな爪が美しいと思っている。
ちょっと反り気味の指先の、私からみたらおすましした意地悪そうな指先。

一緒にお台所仕事をしようとしてもその爪が目に付いて仕方がない。
ピンクの爪から先の白い面積が。
「爪切ってきて。」
その言葉に台所に立ち入らなくなる。
米を洗っておいてほしい時も躊躇する。

爪という皮膚の一部。
タンパク質。
指先にしっかりとした力を籠めるための鎧。
所作を美しく見せる神経の先端、美意識としての爪先。

米を洗い、パンをこね、野菜を刻み、人の肌に触れる私の手。
私の爪は短くていい。丸くていい。
かわいい手だ。

きっと、彼女たちの手も働く手になっていくにつれ変化していくのだろう。
今はまだ何も持っていない手。