キツツキの穴

日々つついた穴を埋めたり、のぞいたり、もっと深く大きくしてゆく穴掘りメモ。

にんじん

一度だけ、義母だった人と私の台所に立ったことがある。
一本のにんじんを調理する時彼女は、細い方を使うか、太い方を残すか私に聞いた。
何を作っていたかは思い出せない。
長女を妊娠しているまだ、つわりでつらい時だった。
台風が迫っていた。
私はにんじんをどちらから使うか考えたことがなかった。
一度の調理で一本使い切ってしまうのが常だった。
肉じゃがを作るときも、カレーの時も、おからを炊く時も、ひじきを炊く時も、
にんじんのサラダも、シリシリも。
どう答えたか覚えていない。

今も、一本使うには多くても、
絶対もう一品増やしてでも、一本使う。
「一本まるまる使います。残しません。」
と、毎回心の中で答えながら、毎回にんじん一本。