キツツキの穴

日々つついた穴を埋めたり、のぞいたり、もっと深く大きくしてゆく穴掘りメモ。

写真を見る事

3月、元夫と暮らしたその家に行った。
飛行機と高速艇を乗り継いで、家での滞在時間30分。
その日の最終便の高速艇で島を出なくてはならなかったから。
とっても淋しい時間だったから、30分でちょうどいいくらいだ。
本当は、新しい女と始めた生活に一枚とて残しておきたくなかったが、元夫がもう二度と見返すことのない程に早く朽ちてしまうよう願いながら、私達の写真の一部を持ち帰った。

ほとんどは交際中の1999年から2000年のものが多いか。
たくさんの写真の中でも、その時の思い出や感情抜きにただ、私が良く撮れているもの、私が好きだった服を着ているもの、私が好きだったものを食べているところ、私が楽しかったと思いだしていい気分のものだけを選んで、私のアルバムにした。
そのアルバムは、子らにも誰にも見つからないような時間にこっそり見る。
見れるようになった私は少し、その時間を肯定できるようになったか。

家族になって、毎年写真館でとっていた何年か分の家族写真も一人でこっそり見る。
そして、いつも子や夫が、先に着て写りたい洋服を選んでしまうのでその色やテイストに合わせてバランスをとるように私が着る服を選ぶと大体必ず、白い服になってしまうのだった。そうやって、形となっていたのだった。
どの顔も笑っていて、まさか家を出ようと一年前から決心していたとは思えないなあと自分のことながら不思議でしょうがない。
決心と、衝動の交わり。

私の家族は一人欠けただけだ。
また、毎年の家族写真始めようか。
そうして、家族写真を増やしていけば、それを見るずっと後の私がどう感じるか。