キツツキの穴

日々つついた穴を埋めたり、のぞいたり、もっと深く大きくしてゆく穴掘りメモ。

指輪

毎日、朝、楽しみにしている読物が
毎日新聞の朝刊に連載されている、林 真理子著「我らがパラダイス」。
作者の林真理子氏の本は、時々、ハッと引き寄せられるように読んでいる。
女もいろいろあるので、ああ~、そんな女もいいなあと思いながら読んでいる。

超高級高齢者住宅施設の中のお話で、
ここにの従業員の女たちが主人公。彼女たちは、高齢の親たちを持つ。
その中の一人が、この高齢者住宅に住むのアルツハイマーによって記憶を失っていくお金持ちの男性と結婚する。が、彼女は指輪をしていない。
そして、ここに住むお金持ちの老女たちが言っていた言葉。

「それはいけませんわ。結婚指輪はともかく、エンゲージリングは絶対に買ってもらわなきゃ」

 いつになく純子はきっぱりと言う。

「エンゲージリングはダイヤですからね。これは女の大切な財産になりますわ。それから夫との大切な思い出になりますから、エンゲージリングは絶対にいただかなきゃいけませんわ」

「ちょっと嫉(や)ける話ですなァ」

 山口がふざけて茶々を入れたので、みんながどっと笑った。

「いいえ、夫との思い出というよりも、幸福な娘時代の最後の思い出といってもいいかもしれませんわねぇ」


彼女たちのセリフは、いろんな感情や、状況を思い起こさせたけれども、
この言葉たちは、とても、居心地悪く、私を空っぽにした。