キツツキの穴

日々つついた穴を埋めたり、のぞいたり、もっと深く大きくしてゆく穴掘りメモ。

蛍を見る事

毎年、蛍を見に行っている。
母の実家近くの玉川は工事の影響か見えなくなっている。
去年と今年は宇治の植物園に行った。
夕方、いつもなら閉館の時間の蛍ナイトに行く。
西に傾いたやわらかい光の中を影と闇の境がわからなくなるその時間まで散策しながら一緒に移ろっていく。

この日はもう、バラは開ききっていて、ダリアがこんなにきれいでつややかで、茎も頑丈なしっかりとした植物だったと初めて気が付いた。
温室はただ一人で懐かしい南の植物たちに会いたい。
見知って、口にして、日常の中に生けて飾っていた花たちや、いつかの見慣れた強い色をした植物たちとの再会は、そこでの暮らしと出会った人たちを思い出して懐かしむには、立ち止まり、見つめて、とても時間がかかる。

アジサイの、昼は見ごろに咲いていたかたまりが、白くいくつも浮かんで見える。
そろそろだ。
小さな小川の草むらの中や、木々の中を飛び回る蛍をたくさんの人たちとぎゅうぎゅになりながらその光を見る。
ギュウギュウのざわざわの中で見る。
それが私にはちょうどいい。

誰もいない森のうっそうとしたシダの下草のなかをわけ入って
乱舞する蛍を見ていたその場所に
全く違う状況で見ているのにいつもそこへトリップする。
それをわかっていて毎年蛍を見に行く。

もう来年あたりこの恒例行事もやめにしよう。