キツツキの穴

日々つついた穴を埋めたり、のぞいたり、もっと深く大きくしてゆく穴掘りメモ。

亀 家出

長女はカメを飼っていた。
お祭りですくったカメ。

一冬越えさせたが、そんなに愛情もって育てているという印象は受けなかった。
水を変えるのも、ご飯をあげるのも「してあげた?」と、
声をかけなければしなかったし、妹をうまく使ってやらせてた。

そうだろうな、私自身長女に対して愛情というものを注いでいない。
かまってもらった、愛してもらっているという実感は彼女にはないだろう。
ゆえに、亀の世話の仕方を知っていても、してあげられないのだろうな。
これは、私が私の母からの愛情を感じてこなかった、または感情を遮断してきたゆえに
また私が子へもどのようにしたらいいかわからないということと同じかもしれない。


ある日気まぐれに、私は演技でも、亀をかわいがる姿を見せようとしてその亀をその水槽から出してやり、桶に水を張り、石を入れ、キャベツの葉や、ちくわなどを入れて日向ぼっこをさせてやり
甲羅に着いた苔を優しく古歯ブラシで磨いてやり、話しかけてかわいがる姿を見せた。
楽しそうに。
で、洗濯物を干したり、少し目を離した間にカメはその桶の中からいなくなっていた。

庭を探した。植木鉢の影も、そこかしこも。
いなかった。
子らも探したが、ほんの数分。
どこかみんな、いなくなったことにほっとしているようだった。
長女も、私を責めるでもなく、あっけないほどすぐに捜索から引き揚げていった。
そんなものだった。

昨日の夜、子らが二人で家出した。
夜9時を過ぎていた。
帰ってきたのは11時をまわっていた。
その間中、私は校区内の子らと行った公園や寺や思いつく場所を歩き回って探した。
万が一にも怖い目にあっているかもしれないという恐れも心にはあったが
きっと、二人で帰ってくるとわかっていた。信じていた。
だから、私は探している風に時間を使うために、ただ歩いていた。
歩きたかっただけだったように思う。
子らは、ただ、遠くへ行きたくて歩いたら結構な距離を歩いていて、
引き返して帰ってくるのが遅くなったということだった。

自分で歩いて帰ってこれる距離でよかった。
私は、遠くへ行き過ぎて帰れなくなってしまったからなあ。
その距離感は、大事だ。

子らは、しれッとして、反省も何もしない。
こんな風に育ててしまった。
こんな風に育っていく。
元夫との面会交流が近づくと、おかしくなる私。うつる子ら。

日常がなくなっていく。