キツツキの穴

日々つついた穴を埋めたり、のぞいたり、もっと深く大きくしてゆく穴掘りメモ。

「君のじゃない、僕の、お客さん。
 ぼくの稼いだお金。
 ぼくの仕事で、君は誰でもできる仕事を手伝ってただけ。」

じゃあ、お客さんからの電話でなきゃよかった。
お客さんの食べるもの、飲むもの準備しなきゃよかった。
洗ったり片づけたり、何にもしなきゃよかった。
伝票の整理も、支払いの手続きも、保険の手続きも、こまごました何もかもしなきゃよかった。
お客さんにあいさつにも出なきゃよかった。

テメーの仕事なら全部テメーがやりやがれ。

ちゃんとお母さんだけ、奥さんだけをすればよかった。
事務所兼家になんか住まなきゃよかった。
ただ、帰ってくる家としていたかった。
あんなに家が欲しかったけど、家になりたかっただけなのだと
元夫のSNSで見た ”家路へ”という写真を見て思った。
私は家じゃなかった。
夫が帰ってきても、仕事の片付けも、夕飯の支度も、子の世話も、
何もかも中途半端で何もできていない子連れの住み込みの女だった。

全部終わるまで帰ってこないでー!!と願いながら
黄昏泣きの子の泣き声の中で仕事の道具を片づけている狂った女だった。

今は、家が待っているのだろうな。