キツツキの穴

日々つついた穴を埋めたり、のぞいたり、もっと深く大きくしてゆく穴掘りメモ。

11月の思い出

毎日新聞を購読していて
日曜日の心療内科医の海原純子さんの新・心のサプリのエッセイを楽しみにしている。

先日の文章の中に、「不快な出来事というのは心に残しておくとくすぶり続けて心や体を汚染する。」

と、あって、そうなんだよ~
誰にも言わなくて悶々としてることあるんだよ~・・・
と、書いてもいいや。書いて吐き出しておこう!と。

もう、5年前の11月のことで、11月になると必ず、ズドンと落ちた時にも、必ず思い出す出来事。
そのころ住んでいたのは僻地と呼ばれるところで、
その地方役場の健康促進課も町民の健康維持向上のためにいろんな企画イベントを行っていた。
高齢化の進んだその地では、人を集めるためにも、いろんな世代の人達を呼び込むにも
まず、交通の手段になる車を運転する若い世代の興味を誘い、
その若い人が「おばあ!こんなのあるけど、一緒に乗せていこうか?」
と、誘い合って足の悪い老人をのせて会場に集まる。

で、この時も、元気に歩くためのウォーキング講座が主旨の健康イベントがあって、
そのおまけみたいに若い世代を呼び込むために、その頃グッとはやり出した地方バンドの○○商店としておきましょうか、
兄弟と従弟3人組のバンドが呼ばれて来ていました。

長女はその頃6歳。保育所生。
次女は1歳。
子らを連れてライブに行くなんて考えられないことだったので、
私もワクワクと喜び勇んで隣のおばあを誘って車に乗せて行きました。
が、そのメインのウォーキング講座に飽きてしまって次女がぐずりだしたので
会場の外に連れ出して、ライブまで遊ばせようと。
外には、同じように幼児を連れたお母さんが。
一緒や~と思って、
「ライブまで頑張れへんかったね~。ウォーキング講座長いね~。すごいライブ楽しみに来てん!」
と、話しかけたら、

「厚かましい。」

と、一言言われ、えっ、聞き間違いかなあ・・。
と、思いながらそろそろ始まりそうなので会場に戻ると、
長女やその他子供たちがステージにしがみついて今にも上がりそうな勢いでライブに大盛り上がりしていました。
でも、私の耳には「厚かましい」の言葉が。

バンドの歌の合間にそのバンドからの
でたばかりのCD やタオル、Tシャツ、サイン色紙のプレゼント。

すると、その私に「厚かましい」といった女性にサイン色紙が当たりました。
ステージからメンバーの一人が
「あんたはいらないでしょう。」
と、親しげにびっくり面白そうな声をかけました。
そう、バンドメンバーその人の奥さんでした。

衝撃です。
自分の旦那のライブに来てうれしそうにしてる客の私に
タダでライブで聴くことに厚かましいと言ったのでした。
じわじわと、その「厚かましい」が広がっていきました。

私だって、自営業者の家族だったし、お客さんのありがたみはよく分かる。
いくらタダでも、聞きに来てくれた客に「厚かましい」って何様やねん。

この知らない女にまで、ここにいることを否とされ、
また居場所を失ったあの気持ち。

長女は、そのバンドが気にいってCDをねだられ買いました。
しばらく、飽きもせず聞いていました。
でも、やっぱり、「厚かましい」が広がって、
CDは捨てました。

5年たちました。
いつまで、この言葉や
あの時のサーーっと足元が消えていくような感覚を思い出すのか。
あんな知らない女にまで居場所を奪われるなんて。

怒りや、憎しみやそんな感情じゃなくて、
絶望感ってなかなか人には言葉にして声に出して言えないものだなあ。と、
今になっても思います。